「ペロー童話集」

ペロー/江口清訳

エキスパンドブック 922KB/ドットブック版 136KB/テキストファイル 69KB

500円

フランスのシャルル・ペローの童話集は、のちにつづくイギリスのマザーグース、ドイツのグリム兄弟による民話収集の先駆をなしたものとして名高い。「眠れる森の美女」をはじめここに収めた「赤ずきん」「青ひげ」「長ぐつをはいたねこ」「シンデレラ」「おやゆび小僧」などは誰でも知っている物語であるが、もとの形は意外に知られていない。エキスパンドブック版にはドレの挿絵を挿入してある。

収録作品

眠れる森の美女
赤ずきんちゃん
青ひげ
長ぐつをはいたねこ
仙女たち
サンドリヨン(シンデレラ)
まき毛のリケ
おやゆび小僧
グリゼリーディス
こっけいな願い

シャルル・ペロー(1628〜1703)パリ生まれのフランスの詩人・童話作家。ルイ14世の時代に、父の跡をついで弁護士として活動しつつ、一方ではアカデミー・フランセーズの会員として活躍。詩人としても名をなしたが、各地につたわる民話を収集してまとめた「童話集」でもっともよく知られる。「長靴をはいた猫」「赤ずきん」「青ひげ」「眠れる森の美女」「シンデレラ」などを集めた「ペローの童話集」は、のちのイギリスの「マザーグース」、ドイツのグリム兄弟による民話収集のさきがけをなした。

立ち読みフロア
 むかし、あるところに、町にも田舎(いなか)にもりっぱな屋敷をもち、金銀のお皿や、ぬいとりのある家具や、金ぴかの四輪馬車をもっている人がいました。ところが、不幸なことに、この人には青ひげがあって、そのために、見るとたいへんみにくく、おそろしかったので、奥さんも娘さんも、この人に出会うとにげだしました。
 近所の人の中で、身分のあるご夫人に、たいへん美しい娘さんが、ふたりいました。青ひげはそのご夫人に、どちらのかたでもいいから、およめさんにおもらいしたいと申しこみました。
 お嬢さんたちはふたりとも、青ひげの男なんかを夫にする決心がつかないので、おたがいに、ゆずりあっていました。それに、もっといやなことには、この男はなんべんも結婚して、それらの奥さんがどうなったか、だれも知らなかったのです。
 青ひげは、お知り合いになりたいからといって、お嬢さんたちを、お母さんと、そのなかのいい三、四人のお友だちといっしょに、別荘のひとつにつれてきました。それから、近所のわかい人たちを呼んで、まる一週間、そこですごしました。散歩をしたり、狩りや釣りをしたり、ダンスをしたり、ごちそうをたべたり、おやつをたべたりして、たのしくすごしました。夜もねむらずに、ひと晩じゅう、みんなしてふざけあっていました。
 とうとう妹娘のほうは、この家の主人に青ひげのあるのをなんとも思わなくなって、それどころか、たいへんりっぱな人だと思うようになりました。そこで、町へ帰ってきますと、すぐに結婚することを承知しました。
 ひと月たちますと、青ひげは奥さんに、だいじな用事で地方へ行ってこなければならない、すくなくとも六週間はかかるだろうと、いいました。そして、るすのあいだは大いにのんびりしてもらいたい、なかのいいお友だちを呼んできてもいいし、よかったらいっしょに田舎へ遊びに行ってもいいし、どこへ行っても、おいしいものをたんまりたべておいでと、いいました。そして、
「そら、これが、家具のはいっているふたつの大きな倉のかぎだ。これは、ふだん使わない金や銀のお皿のはいっている戸だなのかぎ。これは、金貨や銀貨のはいっている金庫のかぎ。これは、宝石がはいっている箱のかぎ。これは、どの部屋でもあけることのできる便利なかぎだ。それから、この小さなかぎは、階下の廊下のはずれにある小さな部屋のかぎだ。どこをあけてもいいし、どの部屋へはいってもいいが、あの小さな部屋だけは、はいってはいけない。いいかい、けっしてはいってはいけないよ。もし、あの部屋をあけるようなことをしたら、わたしはおこって、どんなことをするかわからないよ」と、いいました。
 奥さんは、いわれたことは、かならず守りますと、約束しました。青ひげは奥さんにキスをすると、四輪馬車にのって、旅に出かけました。
 近所の人たちやお友だちは、呼びにくるのを待たずに、さっそく、わかい奥さんのうちへ、押しかけてきました。みんなは、青ひげのうちがどんなにお金持ちか、ずいぶん見にきたかったのですが、ご主人がいるあいだは青ひげがこわくて、どうしても来られなかったのです。
 そこで、みんなはやってくると、すぐに部屋や、小部屋や、衣裳とだなを見てまわりましたが、つぎからつぎへと、みんなきれいで、りっぱなものばかりでした。つづいて、家具のしまってある倉にはいりました。そこには、かぞえきれないほどたくさんの壁かけや、ベッドや、ソファーや、たんすや、円テーブルや、ふつうのテーブルや、足の先から頭のてっぺんまでうつる鏡があって、それらの縁かざりには、あるものはガラス、あるものは銀、または金めっきの銀がついていて、どれもこれも、いままで見たこともないような、きれいでりっぱなものばかりでした。  

……「青ひげ」より

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