むかし、ベナンという王さまが、いました。いい王さまでしたから、みんなに愛されました。でも、正しい人でしたから、わるものたちは、この王さまをおそれていました。
王妃のドゥセットも、王さまと同じように、いいかたでした。ふたりには、ブロンディーヌという、まだ小さいおひめさまがいました。かみがブロンドなので、ブロンディーヌとよばれていたのです。両親に似(に)て、心のやさしい、うつくしい子でした。
ところが不幸なことに、王妃は、ブロンディーヌが生まれると数か月のちに、なくなってしまいました。王さまは、長いあいだ、たいへん悲しみました。ブロンディーヌはまだ小さかったので、おかあさんがなくなったことを、はっきりわかりませんでした。ですから泣きもしないで、笑いながらあそんだり、お乳をのんだり、やすらかにねむることができました。
王さまはブロンディーヌを、たいへんかわいがっていました。ブロンディーヌも、この世でだれよりも、王さまが好きでした。王さまは、たいへんきれいなおもちゃや、とてもおいしいボンボンや、味のいい果物(くだもの)を、ブロンディーヌにあたえました。ブロンディーヌは、たいへんしあわせでしだ。
ある日のこと、ベナンの王さまは、家来(けらい)たちがみんなして、王さまがあとつぎの王子をもつために、もういちど結婚してほしいといっているということを、聞きました。王さまは、はじめのうちは、ことわっていました。でも、とうとう家来たちの願いに負けてしまって、大臣のレジェールに、いいました。
「みんなは、わしの再婚をのぞんでいる。わしはまだ、あのかわいそうなドゥセットの死を悲しく思っているので、じぶんでべつの女をさがす気には、なれない。それで、おまえにまかすから、かわいそうなブロンディーヌを幸福にしてくれるような王女をさがしてきてくれないか。これと思ういい女の人がみつかったら、結婚の申しこみをして、つれてきてくれないか」
レジェールはすぐに出発して、あらゆる王さまをおたずねし、たくさんの王女に会いました。きりょうがわるかったり、せむしだったり、いじわるそうだったりして、なかなかいい人はいませんでしたが、チュルビュラン王さまのところに行ったら、そのひとりの娘が、きれいで、りこうそうで、かわいらしく、また善良そうに見えましたので、あまりくわしくしらべずに、ベナン王のために結婚を申しこみました。
チュルビュラン王は、この王女がわるい性質で、やきもちやきで、こうまんちきで、そのうえ旅行や、かりや、けいばが大好きで、困っていましたので、やっかいばらいができると大よろこびで、すぐに承諾(しょうだく)しました。
レジェールは、フルベッド王女と、衣しょうや宝石(ほうせき)をつんだ四千頭のラバをつれて、出発しました。
ベナン王の宮殿につきますと、飛脚(ひきゃく)によって到着(とうちゃく)するのを知っていた王さまは、フルベット王女をむかえに出ました。王さまは王女を、うつくしいと思いました。でも、かわいそうなドゥセット王妃の、やさしくて善良なようすは、まるでありませんでした! フルベットがブロンディーヌを見たときの目つきがあまりいじわるそうだったので、まだ三つだったブロンディーヌは、泣きだしてしまいました。
「どうしたんだい? いつもやさしくて、おりこうなブロンディーヌが、わるい子みたいに、どうして泣いたりするの?」と、王さまがききました。
ブロンディーヌは、王さまの腕のなかにからだをかくして、さけびました。
「パパ、あたしのパパ、あたしをこの王女さまにやってはいや。とてもこわいの。いじわるそうなんだもの!」 ……「リラの森」冒頭より |