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「草の葉」 ホイットマン/富田砕花訳 ドットブック 176KB/テキストファイル 129KB 525円 |
| 「この書に触れる者はひとりに人間に触れるのだ」という自負の言葉どおり、人間の誇り、民主主義の理想、霊的高み、性的自由、アメリカ精神の神髄を、誰ひとり到達しえなかった地点まで歌いあげた詩人の代表作。ホイットマンは過激、狂人、ポルノ詩人との悪口と、新しい人間精神の開拓者という賛辞のはざまに今日まで生きつづけ、なお最も大きな影響を及ぼしているアメリカを代表する詩人である。
ウォルト・ホイットマン(1819〜92)ニューヨーク州ロングアイランドに大工の子として生まれる。小学校を出て植字工、小学校教員、多くの新聞・雑誌の編集・発行にかかわりながら、詩作に励んだ。代表作「草の葉」は、一生を通じて何度も書き改められた。 |
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| 立ち読みフロア | |
| 一 申し分なく産みつけられ、一人の完全な母によって育て上げられ、 生まれ故郷の魚の形をしたパウマノクを出発して、 多くの国々を遍歴したあと――人の往来はげしい舗装道路を愛するものとして、 わたしの都市であるマナハッタのなか、さてはまた南部地方の無樹の大草原のうえの住民として、 あるいは幕営したり、背嚢(はいのう)や銃をになう兵士、あるいはカリフォルニアの抗夫として、 あるいはその食うものは獣肉、飲むものは泉からじかというダコタの森林中のわたしの住居に自然のままのものとして、 あるいはどこか遠い人里離れたところへ黙考したり沈思するために隠棲(いんせい)し、 群衆のどよめきから遠のいて合間合間を恍惚(こうこつ)と幸福に過ごし、 生き生きした気前のいい呉れ手、滔々(とうとう)と流れるミズリー川を知り、強大なナイアガラを知り、 平原に草を食う水牛や多毛でガッシリした胸肉の牡牛(おうし)の群れを知り、 わたしの驚異である大地、岩石、慣れ知った第五の月の花々、星々、雨、雪を知り、 物まね鳥の鳴く音と山鷹(やまたか)の飛び翔(か)けるのを観察し、 明け方には比類まれなもの、湿地種のシーダー樹林からの鶫(つぐみ)の鳴くのを聴き、 《西部》にあって歌いながら、ただひとりでわたしは《新世界》へと旅立つ。 二 勝利、連合、信頼、一致、時、 破られぬ盟約、富、神秘、 永久の進歩、宇宙、そして近代の諸報告。 これこそ命というものだ、 ここにこそそんなにも多くの痛苦と痙攣(けいれん)とのあとで表面に出て来たところのものがある。 何という不思議! 何という実在物! 脚下には神聖な大地、頭上には太陽。 回転する地球を見れば、 先祖の諸大陸は遠くに一かたまりになっているし、 北と南の現在と未来の大陸たちの間には地峡がある。 見よ、広漠たる人跡未踏の空地を、 夢のなかでのようにそれらは変化し、それらはいっぱいになる、 無数の大衆がそのうえに流れ出して来て、 それらは今や最大の人民と著名な芸術と制度で満たされたのだ。 見よ、時間をかけて放出された わたしのための無際限な聴衆を。 確固とした規則正しい足どりで彼らは行き決して停止することはない、 人々の連続、幾千万のアメリカ人がだ、 一つの世代がその役割を果たして過ぎ去り、 他の世代がその役割を果たして順番に過ぎ去って行く、 わたしの方へと彼らの顔を左右やうしろに振り向けて、聴耳(ききみみ)をそばだてたり、 懐旧のまなざしを向けたりして。 三 アメリカ人よ! 征服者よ! 人道主義者の練り歩きよ! 真っ先のものよ! 前進する世紀よ! 自由民よ! 大衆よ! 君たちのために贈る頌歌(しょうか)の番組。 無樹の大草原の頌歌、 長流して末はメキシコ海に注ぎ入るミシシッピー川の頌歌、 オハイオ、インディアナ、イリノイ、アイオワ、ウィスコンシンそれにミネソタの頌歌、中央、そこから等距離にひろがるカンサスの頌歌、 すべてに生気を吹き込んでやむときなく火の脈を搏(う)って射出する。 四 アメリカよ、わたしの詩篇を受け取れ、《南部》も《北部》も、 どこででも歓迎させるのだ、というのはその詩篇は君たち自身から生まれたものなのだから、 《東部》も《西部》も詩篇を包囲せよ、それは君たちを包囲するだろうからだ、 そして君たち先行者たちはそれらと親しく付き合うことだ、というのはそれらは君たちと親しく付き合うからである。 わたしは古代を研究した、 わたしは巨匠たちの膝下で学んだ、 今や、もし値するものであるならば巨匠たちは立ち戻って来てわたしに学ぶかも知れぬのである。 これら諸州の名においてわたしは古代を軽蔑していいだろうか? 否、それどころかこれらは古代の子孫であってそれを証明するものなのだ。 五 亡き詩人たち、哲人たち、僧侶たち、 殉教者たち、芸術家たち、発明家たち、昔からの諸政府、 異国の国語形成者たち、 かつて強力であり、今は衰亡して姿をかくしもしくは荒廃した国家群、 君たちがこちらの方へ漂い匂わせて残して行ったところのものをわたしが敬意をこめて信じないでは前進をつづけることをあえてわたしはしまい、 わたしはそれをくわしく読んだ、それ自体が賛嘆すべきものだ、(しばらくの間そのなかでうごめきながら) それ以上偉大なものは何もない、それが値する以上に値するものは何もないと考え、 長い間一向専念にそれを凝視したあとでそれを去らせる、 ここにわたしはわたし自身の時代と共にわたしの地歩を保つ。 ここに男性と女性の国土、 ここに世界の男子継承者、女子の継承者、ここに物質の燦然(さんぜん)たる光彩、 ここに女性解明者、公然と承認された霊性、 いつも進路をとっているもの、可見の形態の最終のもの、 満足せしめるものが長い待機のあとで今前進する、 そうだ、ここにわたしの女主人、霊魂が来る。 ……「パウマノクを出発して」冒頭の五節 |
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