|
「古典落語・上方艶ばなし」 藤本義一編 525円 |
|
収録作品一覧 女護(にょうご)が島しつけぼぼ おさがり 赤貝猫 金箔屋 建礼門院(けんれいもんいん) 茶漬け間男 風呂敷間男 左甚五郎 からくり医者 お好み吸物 揚子江 |
松茸(まつたけ) 故郷へ錦 紀州飛脚 張形(はりがた) 羽根つき丁稚(でっち) 忠臣蔵 鞍馬の天狗 逢いびき 反故(ほご)染め 猪飼野(いかいの) 金玉茶屋 下口 上方艶笑私感――藤本義一 |
| 藤本義一(1933〜)大阪府堺市出身の小説家、放送作家。1974年に上方落語家の半生を描いた『鬼の詩』で直木賞受賞。以後文芸作品からエッセイ、社会評論などの著作を発表。井原西鶴の研究家でもある。大阪出身の織田作之助をテーマにした長編四部作が代表作。日本放送作家協会関西支部長であり、プロ作家を育成する心斎橋大学総長も務める。 | |
| 立ち読みフロア | |
| しつけぼぼ ただいまでは、生娘というもんは、稀少価値があるなどと申しますが、これは、昔かて変りおまへん。息子はんに、すっかり身代を譲りはった旦那はんなんかは、なんとかして、もういっぺん一生の思い出に生娘をなんて、さがしてはる方があるそうですな。お茶屋さんなどへまいりまして、 「おかみ、わし、この年齢(とし)ンなってしもうたが、もういっぺんだけ、サラのンをあたってみたいんやが、どうやろなア」 「そら旦はん、むずかしい注文でっせ」 「そやさかい、ゼニ金糸目つけんいうてんのや、なんとかしてえな」 「そうでっか、ほなら、うちのお父ちゃんに相談しますワ」 いうて、相談したんですが、 「なんや、しょうがないな、そら探すの大変やで。まあええ、ほな、あの四国から来た、お花いうのおるやろ。あれがいい」 「そんな阿呆な。あれはあんた、九州、四国まわってきた、すれっからしやおまへんか。あんなん、サラで通りまっかいな、ガタガタでっせえ」 「だから、わしが細工するいうてんのや。おまえ、はよ呼んで来い。それから、糸と針、持ってきてな。上と下とを縫うといたら、わからへんのやから、相手は目がうといのやさかい」 「そんな無茶なこと……」 「大丈夫だから連れてこいッ」 無茶なやつがおったもんで、連れてまいりますと、糸と針でもって、ちょいと結んで、ほうりあげたんですが、ややしばらくあって、旦那はんが下りてまいりまして、 「やあ、やあ、結構やった。久し振りにわては結構な思いさせてもらいましたわイ」 「旦はん、あんた結構なって、生娘やいうことわかりましたか」 「そらわかるがな。誰も手ェ通しとらんからして、しつけ糸がそのままやった」 |
|