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「恋愛論」 スタンダール/白井浩司訳 735円 |
| 「情熱恋愛」「趣味恋愛」「肉体的恋愛」「虚栄恋愛」の分類のもとに古今東西の恋愛感情を縦横に論じた、博物学的、ディレッタント趣味横溢するスタンダールならではの異色の書。マチルド・ヴィスコンチーニへの報われない恋から生まれたといわれる。
スタンダール(1783〜1842)グノーブル生まれのフランスの作家。本名アンリ・ベール。母を早くに亡くし、厳格な弁護士の父親に教育された。17歳のとき、ナポレオンのイタリア遠征に参加、のち陸軍省にはいり、ナポレオン没落後は7年間ミラノに暮らした。7月革命後トリエステ領事、チヴィタヴェッキア領事を勤めた。この間、イタリアやパリで豪奢な社交生活を送りながら恋と執筆に明け暮れた。生涯に十人以上の女性と浮き名を流した。他の代表作に「赤と黒」「パルムの僧院」「エゴチスムの回想」などがある。 |
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心のなかでつぎのようなことがおこる。 一 感嘆。 二 「あのひとに接吻し、接吻されたらどんなにうれしいだろう、云々(うんぬん)」と思う。 三 希望。 相手の美点を研究する。女性がもっとも大きな肉体的快楽を味わいたいなら、この時にこそ身をまかすべきであろう。どんなつつましい女性でも希望の瞬間には眼が赤くなる。情熱がはげしく快楽が鋭敏なことは、めだったしるしとなってあらわれる。 四 恋が生まれる。 恋するとは、自分が愛し、自分を愛してくれるひとを見、そのひとに触れ、できるだけそばに寄り、あらゆる感覚を動員して感じることに快楽を覚えることである。 五 第一の結晶作用がはじまる。 ひとは、自分を愛してくれていると確信のいだける相手の女性を好んで千もの美点で飾りたがる。自分の幸福をことごとく、つぶさにしらべることに、この上ないよろこびを見いだす。これは要するに、天から降ってきた何だかよくわからない、だがたしかに自分のものにちがいないすばらしい財産を、誇張して考えることである。 恋する男の頭を二十四時間はたらかせておくがよい、つぎのようなことがおこるだろう。 ザルツブルクの塩坑では、冬になって葉を落とした木の枝を廃坑の奥深くなげこむ。二、三か月たってとりだすと、枝はきらきらした結晶でおおわれている。せいぜい山雀(やまがら)の脚ぐらいのいちばん細い枝までもが、ゆれてまばゆいばかりにきらめく無数のダイアモンドで飾られている。もうもとの小枝とは見えない。 私が結晶作用と呼ぶのは、われわれの前にあらわれるあらゆることから、愛するものが新しい美点を持つという発見をひきだす精神の働きのことである。 ……《第二章 恋の誕生について 》より |
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